2017年10月121日

ひとりの男が最後まで味気のなかった生涯を自らの手で閉じようとした瞬間、首元に「よく振ってからお生きください」との注意書きがあることに今さらながら気づき、生涯を閉じるのではなく力強く振ってみたところ、雲の切れ間から大量のつぶつぶコーンが降りそそぎ、その生涯を閉じた。

 
2017年10月120日

私の周りには「学校でひとりぼっちだった」という人がとても多い。もちろん、登校してから下校するまで、校舎の隅のトイレに全裸で閉じこもっていた私も含めて。もしかしたら、あの頃。みんな、ひとりぼっちだったのではないか。楽しそうに笑いあっていた奴らも、実は。そして、今も。

 
2017年10月119日

歯医者で口内に器具が挿入されると、意思とは裏腹に舌が動きまわり、抑えようとするほど激しく抵抗して身体から飛びだした。舌によるクーデターには脳や心臓を含む全身の器官が同調し、あとに残されたのは左の乳輪のみ。そして私はなおも生きている。まさか自分が左の乳輪だったとは。

 
2017年10月118日

チャイムが鳴り玄関を開けると、見知らぬおじいさんがイタズラな表情で廊下を逃げていく。その足取りは脆く、いったんドアを閉め、たっぷり待ってから再び開けるも、まだそこにいる。いったい何年ぶりのピンポンダッシュなのだろう。もはやピンポンヨボヨボである。逃げきってほしい。

 
2017年10月117日

歯医者のレントゲンで左鼻の下に影があると言われて耳鼻咽喉科へ。すると、いかにも耳鼻咽喉そうな医者が現れて、厳正なる耳鼻および咽喉の結果、耳鼻を咽喉した罪は重く、耳鼻咽喉の刑は免れないとの判決が下され、まさに耳鼻咽喉な結果となってしまった。耳鼻しても耳鼻しきれない。

 
2017年10月116日

「赤ちゃんを泣かせるな」と激怒する隣人に「ご迷惑をおかけしてすみません。赤ちゃんは泣くものなのですが、殺せということでしょうか」と聞くと「そこまでは言ってない」と沈黙。「では、どうしましょうか」としつこく問うと「俺を殺せ!」と泣きだしてしまった。静かにしてほしい。

 
2017年10月115日

どうも存在が痛むので、久しぶりに昼まで寝ると、口から額にかけてシーツの跡がくっきりついていた。その跡に沿って街を北上すると、そこには赤く濁った池が二つ。釣り竿を垂らして勢いよく引くと、無駄に巨大化して動きの鈍いアイデンティティが私の両目から飛びだし、痛みは消えた。

 
2017年10月114日

小説にタイトルをつけるのが悩ましいので「ひとことでは言えないようなものだからこそ物語にのせてなんとか描こうとしてきたのに結局ひとことで表してしまうのはなんだかおかしいんじゃないかと思うのですがそもそも小説にタイトルなんているのでしょうか」というタイトルにしようか。

 
2017年10月113日

壁の向こうで行われていたはずの野球の試合は「バッチコーイ」という外野の緊張感のない間延びした声を打ちけすような破裂音が響くと、矢のような弾丸ライナーが壁を越えて場外へ着弾。歓声と悲鳴が入りみだれる燃えさかる空へ高々と舞う、首、首、首。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。

 
2017年10月112日

Facebookを久しぶりに開くと、頼んでもいないのに5年前に投稿した写真が表示された。今とまったく変わらぬ体たらくをまざまざと見せつけられ、自分自身の成長のなさに心底うんざりしていたのだが、よくよく見れば顔のシワは今よりも濃く、頭の髪も薄い。5年後の投稿だった。

 
2017年10月111日

「前にお会いしたことがあるのですが覚えていらっしゃいますか?」と聞かれたので「もちろん覚えてますよ!きゅうりの古漬けでお互いのおしりを叩きまくったあげく、やっぱり浅漬けのほうがバシッとしてて気持ちいいと意気投合した仲じゃないですか」と答えたら、その人じゃなかった。

 
2017年10月110日

「なぜ電子タバコは香りもよくて害もないのに吸ってると嫌がられるのか」との議題に、彼は「本当に害がないかはさておき、香りもよくて害もない電子ウンコがあったら嗅ぎたいか?」と論破的な表情を浮かべたが、そんなウンコがあったらいつまでも嗅いでいたいに決まってるじゃないか。

 
2017年10月109日

少し伸びた髪の毛を風呂場で刈り、シャワーで流してから目を開けると、そこは真っ暗闇。下水道のようだ。しばらく汚水のなかをさまよったものの、なんとかマンホールから地上へ出て自宅へ戻ると、坊主頭の私と妻が楽しそうに夕飯を食べながら「おかえり」と出迎えてくれる。ただいま。

 
2017年10月108日

異国に住む生後3か月の孫とまだ一度も会ったことがないおばあちゃんは、スマホ画面に映る孫へ話しかけつづけ、孫がなにやらしゃべると「私の言葉に反応した!」と喜んだ。その姿はあまりにも嬉しそうで、居合わせた親戚たちはそれがテレビ電話ではなく動画だなんて誰も言えなかった。

 
2017年10月107日

「子どもたちにやさしい平和な社会を!」なんて大層な言葉を「私が実現します!」といともたやすく確約しながら、自分の名前を大声で連呼しては満面の笑顔で手を振りつづける妙な女が虫の湧きやすい雨上がりの街を車で通りすぎ、ベビーカーで眠っていた子どもたちが一斉に泣きだした。

 
2017年10月106日

「東京ドーム1個分の広さ」ではピンと来ず、平均的なおっぱいの半径を6cmと仮定し、おっぱい1個分の面積である113.04㎠で東京ドーム1個分の面積を割り、「おっぱい413万6146.5個分の広さ」と言いかえてみたら、具体的なイメージはともかく、夢は一気に膨らんだ。

 
2017年10月105日

銀杏並木の下で、なにやら臭う黄金色の玉を拾っては小さな袋にひとつずつ詰めている神たちがいた。さらに、その袋をふたつずつ縫いあわせると、天使たちが息を吹きかけて肌色に塗りかえていく。畏れ多くも「なにを創造しているのか」と聞くと、神たちは微笑みながら私の股間を示した。

 
2017年10月104日

おまえ以外と焼肉へ行くときは必ず自分で焼くようにしてるんだ。自分でもおまえでもない誰かに焼かれた生肉なんて信用できないからな。そう微笑む彼は、私がナイフで切りおとして焼いたものを「コリコリしてて旨い!」と貪っている。自分の耳とも知らずに。次は舌でも焼いてあげよう。

 
2017年10月103日

こんなルービックキューブは嫌だ。そんなお題への回答を紙に書き、順々に出していく。すると、真っ先に「ウンコ製」と答えた男が「下ネタは安易だろ」と集中砲火を浴びる事態に。私も「そうだそうだ!」と火に油を注ぎながら「ビーチックキューブ」と書かれた手中の紙もろとも燃やす。

 
2017年10月102日

「缶ビールを片手に立派な企業戦士になるべく狩りへ出るも獲物は見つからないまま夜になり北千住のオアシスで渇きを凌いでいると遠くより漏れる野獣のような雄叫びが雨風で冷えきった我が身に響く」との句読点のない便りがアル&求職中でハロワ&風俗通いの愛すべき友から届いて、秋。

 
2017年10月101日

妻の代わりに育児を引きうけてオムツ姿の息子と戯れていると、オムツはパンツじゃないのだから、息子はノーパンと言えるのではないかと不意に思った。つまり、ノーパンとは必ずしも下半身がモロ出しになっているわけではないと気づかされたのだ。子育てというものは本当に学びが多い。