2017年9月130日

「締め切りがあるものとないものとでは勢いに雲泥の差が出るんだ。締まりなく切りなくだらだら垂れながすよりも、締まりよく切れよく出したほうがスカッとするだろうが。毎日クソして生きていやがるくせに、そんなことも分かんねえのか!」と肛門に頭を引っぱたかれながらハイボール。

 
2017年9月129日

「学生気分が抜けてないなんてよく怒るけど、学生気分を抜きすぎるのもダメだよな。後先考えずに自分の夢を熱く追いかける。そんなあの頃の勢いがなくなってしまったよ」と学生時代の四年間、後先考えずに朝から晩までパワプロをやりながら私と酒を浴びていたはずの友人が嘆いている。

 
2017年9月128日

1日1回ずつ1万回、アホくさいって言ってみて。クイズ博士の井川君から出された問題をクリアしたことを彼に伝えると「では今、どんな気分?」と聞かれた。その正解は分かりつつも、約三十年もの歳月を費やしただけに「アホくさい」とはとても言えそうにない。さすがは博士。難問だ。

 
2017年9月127日

つい先日まで「夏といえばサンバでしょ」と腰を振っていた男が「秋といえばサンマでしょ」と腰を振りはじめたので、松任谷由実の『春よ、来い』を瞼を閉じて聴いている。どうせ、冬になれば「サンタでしょ」と腰を振りはじめるにちがいない。ああ、春よ。遠き春よ。瞼閉じればどこに。

 
2017年9月126日

B子曰く「ってのが私の信念なの、とか聞いてもないのに言ってくる奴ほど言ってることが信じられないほどコロコロと変わるし、そもそも自分勝手に信じてるものだとか念じてるものだとかを他人にまで勝手に押しつけてくる新興宗教みたいな奴とは絶対つきあわないってのが私の信念なの」

 
2017年9月125日

仕事帰りに自分の胸元を見ると、ささやかな膨らみが二つ。先日、息子へ授乳する妻に「おれも母乳あげられたらいいのに。神様におっぱいつけてもらって」と下らない軽口を叩いたせいだろうか。神様は冗談が通じないタイプらしい。ひとまず、母乳には豆腐がいいらしいので毎日食べよう。

 
2017年9月124日

美容院へ行くのが嫌で『プリズン・ブレイク』に今さらハマっている妻に頼んだら「マイケル・スコフィールドみたくしよう」とバリカンで刈られることに。再び目を開くと、懲役35年ローンなら買える中古物件の間取り図を全身に彫られた虎刈りの中年囚人が、鏡の前で立ちすくんでいた。

 
2017年9月123日

祝日の土曜日は凶悪だ。振替休日もないし土曜日に通っていた歯医者も祝日休診で開いていない。『プリズン・ブレイク』を見返しているときに穴でも掘られているかのように痛みだした奥歯を仕方なく自分で引きぬくと、その下から血まみれのセオドア・バッグウェルがナイフ片手に現れた。

 
2017年9月122日

「”恋愛”もギュッと縮めると”変”になるからね。きみがあいつに心をギュッとつかまれておかしくなってしまったのも仕方ないよ。また脇を締めて次の恋を探しにいこう」と、顔と足だけにギュッと縮められたイケメンが、脇どころか性器もないくせにホテルへ連れこもうと口説く金曜夜。

 
2017年9月121日

「この世の終わりみたいな泣きかたですね」と絶賛すると「この世の終わりで人が本当に泣けるかなんて知りもしないくせに、気やすく比喩を使うな!言葉には人間なんて簡単に握りつぶせるほどの大きな現実に変わる力があるんだぞ!」と激昂。それが彼のこの世の終わりになってしまった。

 
2017年9月120日

他人の性癖をとやかく言うつもりはまったくないのだが、彼の背中にピンクのブラジャーが色濃く透けてしまっていた。もし気づいていなかったからかわいそうかなとこっそり伝えると「なに言ってるんですか。ブラジャーなわけないでしょ。タトゥーですよ」と笑う。なに言ってるんですか。

 
2017年9月119日

オフィスビルの下から塾帰りの子どもたちに「会社の犬め!」と石を投げつけられたヨレヨレのスーツ姿のおっちゃんは、玉虫色の首輪に玉虫色のリードをつながれたまま窓から飛びおりてバンジージャンプを決めた。子どもたちは恐れをなして立ちすくみ、夜空にかかる虹をただただ仰いだ。

 
2017年9月118日

昨夜から喉が痛くてノド飴でも舐めたかったのだが、台風のせいで買いに行けないまま朝を迎え、声が枯れてしまった。せめて台風一過の澄んだ空気でも喉に流そうとベランダへ出ると、散乱するハンガーの合間に、横なぐりの叩きつけるような字で「お詫び」と書かれたノド飴が落ちていた。

 
2017年9月117日

今日も近所のインド料理屋に大行列が。並んでいた男に「そんなに旨いのか」と聞くと「味は食えたもんじゃない」と言う。たしかに店内に客は一人もいない。よく見ると、入り口ではなく換気扇の前に行列ができていて、なんとも旨そうな匂いが漏れてくる。並んでも嗅ぎたい名店のようだ。

 
2017年9月116日

幼いころの写真を見返すと父と二人で遊んでいるものばかりで「死んだ父とは仲がよかったのにな」と疎遠気味の母との関係を憂いていたのだが今日、私と息子が遊んでいるところを妻が嬉しそうに何度もカメラで撮る姿を見てハッとした。あの父と私の写真を何枚も撮っていたのは母なのだ。

 
2017年9月115日

女子校生向けキャンペーンを考えることになり「デジタるかデジタれるかがカギですね」などと意味不明なワードをパステル媚びカラーの企画書で連発し、ほとばしる加齢臭を巧いこと煙に巻いたつもりが結局、条例により連休明けから存在にモザイクをかけて生きていくことになってつらみ。

 
2017年9月114日

銀行員の男が「健康にはトマトが一番。実はベランダで育ててまして。カラスよけにはストッキングをかぶせるといいんです」とカラスにつつかれながら言うので、脱ぎたてのストッキングを頭にかぶせてあげたら、興奮のあまり「金を出せ!」と真っ赤になって窓口に座る私へ拳銃を向けた。

 
2017年9月113日

電柱だけを心の支えにして人生を歩いてきたら「すぐそこ」との文字が現れた。「やっと着いたか」とホッとしたのも束の間、どこにも見当たらない。電柱を再び仰ぐと、たしかに「すぐそこ」とあるのだが、なにが「すぐそこ」なのかまでは書かれていなかった。なにを探していたんだっけ。

 
2017年9月112日

生肉を焼きながら「笑いすぎて死ぬってのがあるなら、死にすぎて笑うってのもあるのかな」と彼が言うので、内心どうでもいいと思いつつ「さあね」と答えると、彼は「おまえに聞いてるんだよ!」と激怒しながらトングで私を刺した。これで記念すべき10000回目の死。さすがに笑う。

 
2017年9月111日

なんだか自分の金玉がよそよそしい。なんでも自分ごと化しすぎる人に「自分の責任をもっと感じて、自分のものなんだって意識を強く持てよ」と言われたときに「あなたの皮がシワシワなのは私の金玉のせいです。あなたは私の金玉です」と答えてから他人のふりをされているせいだろうか。

 
2017年9月110日

日曜日になると曜日感覚がなくなるよね。そんな矛盾した会話をしながら夕飯になにを食べて翌朝の便に変えてやろうかと考えていたら「久々にピザは?」と聞かれる。「あれ、最近、食べなかったっけ?」と返すと「そういえば明日の夜に食べたね」と言う。いや、明後日の夜だったような。

 
2017年9月109日

年末、東京へ久々に帰省することに。K氏に会おうかと電話するも家族が出て「また失踪した」と言う。早速、彼の部屋の住所を検索すると、賃貸サイトに懐かしい間取り図が。よく二人で酒を飲んだリビングの角が壁で仕切られ、人ひとり隠れられるほどの見知らぬ空間がある。見いつけた。

 
2017年9月108日

今朝、生卵を床に落として、彼を思いだした。あの日も私が生卵を床に落とし、彼は「落としたくないと思うから落とすんだ。なにも考えずに前だけを見ていれば落とさないのに」と笑った。帰り道、なにも考えずに前だけを見て歩いていたせいで、生命を谷底へ落としてしまうとも知らずに。

 
2017年9月107日

朝から口が異様に臭いので歯医者へ寄ると「ネギ知らず」と診断された。「親知らずの一種ですか?」と聞くと「いえ、ネギを知らない人の口に生えてくる長ネギという野菜です」とのこと。小口切りにして豆腐と食えば美味いと言うので、抜いて持ちかえることに。今夜は、湯豆腐にしよう。

 
2017年9月106日

缶コーヒーでも飲もうと自販機へ。「おいしいとこどり贅沢味」とのフレーズに腹が立ち「おいしいとこなし辛酸味」のほうのボタンを強く押した瞬間、目の前には広大なコーヒー農園が。イタリアからここエチオピアへやってきた先輩のマッテオにしごかれつつコーヒー豆の収穫から始める。

 
2017年9月105日

「ところてん」と書かれた屋台が、夜のビジネス街に。女が「役員連中はまだ残ってる?」と店主に聞くと「まさか」と鼻で笑うので「じゃあ主任マシマシでいいや」と注文。高層ビルの無数の窓から、酸味の効いた残業中の主任たちが多めに入ったニュルニュルが押しだされ、女に呑まれた。

 
2017年9月104日

昼に特大かき揚げうどんを頼んだら「そんな脂っこいもん食ったらテッカテカのウンチになっちまうぞ」と後ろの席から言われたので「さすがにウンチは勘弁してくださいよ、ごはん中に」と振りむくと「なにを偉そうに!俺だって元々はごはんだったんだぞ」とテッカテカの男が泣いていた。

 
2017年9月103日

秋風香る公園の砂場で、汗だくのおじいさんが奇妙なステップを踏んでいた。聞けば「W杯に向けた練習」と言う。「なんの競技なのか」と尋ねると「名前はまだ決めていない」とのことで「今のところ競技人口も自分だけなので日本代表に選ばれるのは確実」と胸を張る。全力で応援したい。

 
2017年9月102日

ファミリーまみれのフードコートで食べはじめる瞬間に息子がぐずり、妻と授乳室へ消えた。ラーメン、天津飯、餃子が二つずつ並んだ席で帰りを待っているあいだ「あの人、独りで二人前の天津飯セット食べてるw」との視線が痛く突き刺さりはじめたので服を脱ぎ、全裸で浴びて堪能した。

 
2017年9月101日

ビンゴ大会で当たった大量のキャベツ太郎の処理に困り、ホワイトハウスのお菓子コーナーへこっそり遺棄した上級職員のハリスは「置いたのキミかい?」と疑われると「根拠なき決めつけは冤罪を生む」とハーバード仕込みの弁論術を展開し「マークに決まっているじゃないか」と一蹴した。