2017年8月131日

人間には二つのタイプがいるんだ。そう彼は得意げに切りだすと、もったいぶるようにハイボールを飲みほしてから「食べるタイプと食べられるタイプ、そして食べないタイプだ」と言った。三つだった。もしかしたら「食べられないタイプ」もいるんじゃないかと思ったが言わないでおいた。

 
2017年8月130日

「いまクサいと思ったでしょ?」「いえ別に」「いや絶対に思った。個性的だと思えばクサくないわよ」「クサいは個性」「どう?」「……」「なに黙ってんのよ」「すみません、急いでるんで」そう鼻をつまみながら「大」を押すと「そんなに大きくないわよ!」と叫びながら流れていった。

 
2017年8月129日

昨夜、カメラ講習会に参加すると、被写体の女性に気づかれない角度から、必死の形相でファインダーを覗く男がいた。聞けば幾多の戦地へ赴いては女性の胸ばかり撮りつづけている戦場おっぱいカメラマンとのことで「おっぱいこそが世界平和の象徴だ」と熱く語りながら連行されていった。

 
2017年8月128日

とある展示会で静まりかえったブースがあり、出展者は「完成した作品の上にうっかり物を落として壊れてしまった」と嘆き、ビリビリになったパソコンの画面が暗闇に光っていた。むしろ、その光景こそが圧倒的で感動したのだが、さすがに「すごくいい作品ですね」とは言えず沈黙。帰宅。

 
2017年8月127日

お題ごとに「仕事」「家庭」と書かれた巨大パネルのいずれかを選んで突き破っては泥水へダイブする生放送番組「仕事と家庭どっち!?」を見ていたら「仕事でも家庭でもなく自分だ!」と叫んでパネルとパネルのあいだの鉄柱に頭から突っこんだサラリーマンが真っ二つに割れて優勝した。

 
2017年8月126日

ダイニングテーブルを思いきって奮発して買ったので模様替えをすることに。ダイニングテーブルを置く位置にあるサイドボードを部屋の奥へ、サイドボードを置く位置にあるソファを部屋の手前へ、ソファを置く位置にある私を部屋の外へ移して無事に完了。快適な野宿生活の始まりである。

 
2017年8月125日

背中を流れる大量の汗に「滝のようだ」とゲンナリしつつ涼んでいたら、滝を背景に自撮りできると聞きつけた女子たちが背後に行列をなしていたので、千円ずつ徴収すれば「鬼のように」儲かるなと狂喜したのも束の間、見知らぬ島へ流され、桃臭い男や野蛮な獣どもに退治されてしまった。

 
2017年8月124日

信号無視のダンプカーがすれすれを通りすぎて止まった。慈悲深い言葉を吐いてやるべく運転席のドアを開けると、出会い頭事故太郎だった。「大阪にいるとお聞きし、いつかお轢きできればと楽しみにしていたのですが……残念。また出会い頭に!」と走りさる。相変わらずそうでよかった。

 
2017年8月123日

可及的速やかに解決しなければならない問題にも関わらず可及的速やかに解決しようとしないのは可及的速やかにとの言葉自体が冗長で問題の解決を遅延させているからだと指摘されたので可及的速やかにの使用を可及的速やかに停止すべきとの問題を可及的速やかに解決しなければ。

 
2017年8月122日

「思いえがいていたのとはちがう糞のようなものを自分が望んだものとして周りから見られてしまうのは遺憾ですが、それも人生として生きております。慰謝料として二十万円ほど、以下の口座に振りこんでください」と母の名を騙る手紙が届いた。宛名は、糞のような息子へ。母の字だった。

 
2017年8月121日

毎朝、出勤時に見上げていたビルとビルの隙間の空が、新しいビルで塞がれていた。ただ、外観は古く、昔からあるようだ。まさか。そう違和感が走った瞬間、街はゲシュタルト崩壊し、見渡す限りの建物が鳥貴族に。会社も自宅も見失い、もも貴族焼で飢えを凌ぎながら赤と黄の夜を彷徨う。

 
2017年8月120日

息子の首に小さな浮き輪型の商品をはめて湯船へ入れる。これさえあれば息苦しくもなく溺れないと聞き、大人用を探すも見つからず。仕方なく、息子のそれに頸動脈を無理矢理ねじこんで社会を歩いてみると、息苦しく溺れていた我が存在は意識もろとも天に昇り、跡形もなく消えてくれた。

 
2017年8月119日

生後2か月検診の帰り道。抱っこ紐から飛びでた息子の足に、草むらから飛んできたおっちゃんが止まり、「起こしたろか、泣かしたろか、コーショコショコショ、コーショコショコショ」と鳴きつづけ、結局、家までついてきてしまったので飼うことにした。エサは枝豆と金麦でいいらしい。

 
2017年8月118日

餃子上過失致死に問われた今日の裁判で「焼餃子を水餃子に変える作業自体が無茶で、焦げ目の研磨除去による鮮度の劣化は不可避。そもそも誰が死んだのか」と反論。急遽、現場に残された致死量の血痕がDNA鑑定され、死んだのは私であることが判明。被疑者死亡のまま書類送検された。

 
2017年8月117日

盆前に自転車を会社に置いてきたせいで今朝は電車で出勤。入眠するも「盆が明けたというか暮れただね」「デーモンも小明じゃなくて小暮だしな」との国益を左右しかねない会話がうるさく、だから電車通勤は嫌なのだと目を開くと、静まりかえった車内に一人二役の自分の声が響いていた。

 
2017年8月116日

人生で初めて整骨院へ。整体師は腰を触るや否や「右ひじをついて仕事してるね」と言いあてた。感心すると、彼は得意げに「で、真剣に考えごとをしてるように見せかけて、女のパンツのことばかり考えてるね」と続けた。さすがに怒ろうと思ったが、まったくその通りなのでやめておいた。

 
2017年8月115日

たこ焼き器を初めて買った。こんな形の鉄器が出土したら、たこ焼きを知らない未来の考古学者はなんの道具なのか分からないのではと心配になりつつ仮眠。目覚めると、見知らぬ鉄器が部屋にあった。丸い穴がちょうど20個あったので、手足の指先から採れた金玉の収納に使うことにした。

 
2017年8月114日

最近、洗いたての服がどうも臭うので、洗濯中の洗濯機の蓋をそっと開けて覗いてみたら、自分の肛門が気持ちよさそうに口を開けて回っていた。「最近、ちゃんと洗ってくれなくて臭うので、こうしてこっそり自分で洗っているんです」と申し訳なさそうに口をすぼめて言う。申し訳ない。