2018年6月2日(土)

朝起きると、右足に激痛が走り、まともに歩けなかった。よく見れば、親指にトゲが。安らかに寝ているあいだに右足の親指にトゲが刺さるだなんて事象がこの世に起きえるだろうか。

「まさか」と思いながら妻の顔を見るも、特にいつもと変わった様子はない。試しに「右足の親指にトゲが刺さっているみたい」と告げると、血相を変えて薬箱から針を取ってきてくれた。「やはり、妻の仕業ではなさそうだな」とホッとしつつ、針の先でトゲをつついて取ると、激しい痛みもウソのように消えた。

討ちとったトゲをさらし首のように手のひらにのせてやると、目を細めなければ見えないほどにちいさい。「こんなちっぽけな異物のせいで前に進めなくなるくらい人間は脆い生き物なのだから、自分とは異なる価値観も受けいれて生きていこうだなんてのはきれいごとにすぎないんだろうな」と確信した。

まあ、そんなことは「ひゃくいちさんってコピーライターっぽくないですよね。いや、良い意味で、良い意味で。それはそれでアリだなと僕は思ってますけどね」と蟻を見下ろすように嗤う、コピーライターの輝かしき王道をゆく若きコピーライターたちの目を見れば一目瞭然である。

ただ、異物たちが集まってひとつのコミュニティのようなものを築くことができれば、そこでは異物も異物ではなくなるのかもしれない。たとえば、コピーライターっぽくないコピーライターたちによる、「東京コピーライターズクラブ」ならぬ「東京コピーライターっぽくないズクラブ」である。

そんなクソの足しにもならないようなことを考えながら、開いたままにしていた手のひらを再び見やると、さっきのトゲも呆れたようにどこかへ消えていて、右足の親指がまたズキズキと痛みはじめた。